卸売及び小売事業の外資規制緩和

堤 雄史(つつみ ゆうじ)

SAGA国際法律事務所代表弁護士

(1) はじめに

2018年5月9日に商業省は卸売及び小売事業を外国会社に開放する内容の通知(商業省2018年第25号通知。以下、「本通知」という)を発布した。従来、Tradingと言われる、卸売、小売、貿易事業は原則として外国会社が実施することが2001年以降禁止されていた。2011年の民政移管後に徐々に開放され、近時、商業省の各通知により、自動車、肥料、種子、殺虫剤、医療機器、建設資材、農業用機器等については一定の要件の下で外国会社が卸売を行うことが認められた。また、投資法に基づき2017年に発布された規制業種通知においては、ミニマート等を除き、小売及び卸売も商業省の許可を得れば実施可能な業種とされたものの、実務上は外国会社が商業省から当該許可を取得することは極めて難しかった。

本通知は一定の品目に限らず、全面的に卸売及び小売事業を外国会社に認めた点、及び、どのような基準で許可が認められるかを明確化した点に意義がある。

以下、本通知の概要及び留意点を説明する。

(2) 定義及び対象品目

「小売」とは、一般大衆に対して、再販売の目的ではなく、使用又は消費の目的のために比較的少量の物品を販売することを意味する。「卸売」とは、小売業者及び製造業者に大量の物品を販売することを意味する。

対象品目について、制限・禁止品目を除くとの記載があるが、それ以外の限定は特に加えられていない。2018年7月26日に商業省よりNewsletter No. 3/2018(以下、「Newsletter」という)が発布され、当該レターにおいて、販売が優先的に認められる24品目が規定されている。

(3) 初期投資額

小売又は卸売の許可を得るためには、外資の出資比率、小売、卸売のいずれを行うかに応じて異なる初期投資額が要求されている。具体的には下記の表のとおりである。

外資の出資比率 卸売に必要な初期投資額 小売に必要な初期投資額
外資100% USD500万以上 USD300万以上
外資80%超(内資20%未満) USD500万以上 USD300万以上
外資80%以下(内資20%以上) USD200万以上 USD70万以上
内資100% 支出可能な金額 支出可能な金額

本通知上は、外資の出資比率が80%超であるか、0%であるかで必要な初期投資額が異なる。他方、会社法上は外資が35%以内であればミャンマー会社として扱う旨規定されている。このことから、両者は異なる基準となっている。小売及び卸売業についての管轄は商業省であり、管轄省庁である商業省が本通知を出している以上、会社法上のミャンマー会社であっても本通知に従う必要があると解される。

また、初期投資の定義について、土地の賃料については含まれない旨明記されている。建物の費用や人件費等の取り扱いが明らかでない。もっとも、関係者によれば、基本的には取り扱う商品の購入金額が想定されているとのことである。

投資の内容について、土地の賃料については含まれない旨明記されており、建物の賃料については取り扱いが明らかでない。投資額について、会社単位ではなく、事業(店舗)単位と解されている。また、卸売・小売の両事業を行う場合には、両事業の合計額が必要とされる。

(4) 留意点

初期投資額について、Newsletterにおいて、3年以内に全額の投資が必要であり、かつ、全てを資本金として入れる必要がある旨が明確化された。

また、上記の要件を満たしたとしても、完全外資又は合弁企業は、929平方メートル以下の売り場のミニマート及びコンビニエンスストアを運営することはできない。

以上のとおり、問題点もあるものの、本通知及びNewsletterは従来のミャンマーの外資規制を緩和するものとして非常に重要である。しかし、本通知発布後わずか2か月程度で優先品目が別途規定されており、かつ、当該品目は今後も変更の可能性がある旨規定されている。そのため、本通知に基づき小売・卸売を実施することを希望する場合には、できる限り早く申請を試みることが重要であると解される。
SAGA国際法律事務所代表弁護士

堤 雄史(つつみ ゆうじ)

東京大学法科大学院卒。2012年よりミャンマーに駐在し、駐在期間が最も長い弁護士である。SAGA国際法律事務所代表であり(http://www.sagaasialaw.com/)、タイにTNY国際法律事務所(http://www.tny-legal.com/)、マレーシアにTNYConsulting(Malaysia)SDN.BHD.(http://tnygroup.biz/index.html)を有している。タイ法、マレーシア法及びミャンマー法関連の法律業務(契約書の作成、労務、紛争解決、M&A等)を取り扱っている。問い合わせ先:yujit@tny-legal.com

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